六〇〜七〇年代の消費者は、財布に現金をおさめハレの服装で身を整えていそいそと百貨店に出かけていった。そこには、休憩のための食堂や遊園地までセットされていた。買い物はハレの祝事だったから、食堂や遊び場が不可欠だったわけだね。六〇〜七〇年代は、不足していたモノを入手する必需型消費の時代であり、欲しくてたまらないモノ(不足していたモノ)を入手できる感動が買い物の楽しみに重なる時代であった。初めてテレビを入手したときのあの感動は、いまの若者にはとても想像できないだろうね。当時の消費者にとっては、不足しているモノはことごとく神器に見えたのだ。そんな神器を買うのだもの、上から眺め下から眺め、おそるおそる突っついたり、触ったり、なめたりかじったりして慎重に吟味しないわけにはいかなかったのだ。百貨店は、そんな神器の数々を陳列している小売の神殿だった。当時の買い物行動が百貨店に代表される店舗販売(現物販売)に集中していったのは当然すぎる話だった。