ある母親は産院(もちろん究極のブランド産院である愛育病院である)を子どもを抱いて退院したその足で個人塾の先生にご挨拶にいったら「首が据わってからいらっしゃいましね」といなされたという。それならば、と半年後にしっかり首が据わってからお願いにあがったら、「あら、もう定員の十名はほとんどうまってしまっているのよ」と言われ、青くなったそうだ。強力な紹介者のとりなしで無事入会できたものの、「とにかく先手先手が必要なのよね」と実感を込めて語っていた。「生まれたときから私立小学校をめざし、ふさわしい個人塾をさがす」くらいの覚悟がなければ、「有名御三家九割九分合格」の数字を毎年出している優良個人塾に入会はできないのかもしれない。表だって宣伝をしない個人塾の子ども集めは、「実績」と「クチコミ」が命である。「あの先生のところ、今年は慶應幼稚舎の合格率が五割にさがったそうよ。これまでは七、八人受けて不合格のお子さんがせいぜい一人か二人だったのに、今年は合格したのがたったの四人ですって」などとお受験ママ情報ネットワークでささやかれようものなら、たちまち翌年から生徒を集められなくなって干上がってしまうのだろう。
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