遠く離れた大学で医師国家試験の勉強をする

2012.02.05

秋田と東京。二人の仲は万有引力の法則にのっとって、距離の二乗に比例して離れていった。休みで帰京するたびに何度か会っていたのだが、次第に共通の話題が少なくなり、3年生の夏休みにU医師はMさんからボーイフレンドを紹介された。実に頭のよさそうな顔をした東大の医学生だった。コンプレックスのかたまりのようになったU医師は、以後、Mさんと会うことはなく、鬱屈した秋田での大学生活を送った。とりあえず医師国家試験にパスできるくらいの勉強だけはして、あとはアパートの部屋にこもって小説を読んでいた。背伸びすることをやめたU医師は、腫を地に着けて歩くようになった。好んで入った大学ではなかったが、もとは群馬の山村育ちの自分にとっては等身大の、無理をしなくても適応できる場所なのだと自身を納得させた。ただ、秋田の冬の気候だけはどうしてもなじめなかった。暗い空に低く垂れこめた厚い雲から毎日雪が降っていた。どちらかというと植物的な神経の持ち主であるU医師の気分は気候に大きく左右された。最終学年をむかえた頃にはこの土地を逃げ出すことだけがU医師の唯一の目標になった。そのためには卒業試験と医師国家試験にパスしなければならない。彼は自分を追いつめて、卒業までの3ヵ月間だけは受験生の頃のように根をつめて勉強した。