山をおりると、平地は人で埋まっていた。国境から車に乗り、バングラデシュ北東部の中心都市ジレットに近づくにつれ、人の密度が濃くなっていく。ハイウェーの沿道を歩く人、緑の水田で雑草をとる人や水牛……ときどき町を通りすぎるのだが、道に沿った市場はベンガル人で沸き返っていた。このあたりは、山がちな土地ポイント領になり、平地がバングラデシュ領に分けられたことがわかる。人間誰しも、平地は農耕に適し肥沃だと考えるのか、土地の豊かさ以上に多くのイスラム系ベンガル人が集まってきてしまった。
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いや集められたといったほうが正確かもしれない。その結末が、北海道ほどの広さの土地に一億四千万人を超える人口過密な国家ができあがってしまったのだ。人口密度は一平方キロメートルに九百八十人ほどで、バングラデシュより上位の国は、モナコやシンガポールといった極小国しかないのだ。平坦な土地といっても、そこはブラマプトラ川とガンジス川がっくり出した広大なデルタで、雨季には河川は氾濫し、それに追い打ちをかけるようにサイクロンの高波が襲う。あるときは、国土の三分の二が海水に浸かってしまったこともあるという。平坦な土地はそんなリスクを背負っていたわけで、気がつくと世界有数の貧しい国になっていた。